June 27, 2009

人工砂漠と竜巻

いきなり夏が来ました。
待ち遠しかった、ハウス砂漠のギンギラギンな毎日。
ここまで葉っぱをガリガリに縮こまらせて辛抱していたメロンが、どん、と動き出しました。
遠慮をわすれた陽射しのおばちゃんに、後ろからどつかれたかのごとく。

そこでメロンには、まず芦別山麓の沢水をしっかり飲んでいただき、
急な展開に弱ることなく玉に養分が集まるよう、静かに芽摘みを続けているところです。
今日は、最終的にメロンにする玉を決め、それ以外の成り玉を取り去る作業を、全て終えました。
これでまずはすべてのメロンに花を咲かせ、実をつけるまでのところをクリア出来たわけです。

さてここからがメロン作りの正念場であり、各農家さんの腕の見せどころとなってきます。
より大きく、よりきれいなネットを張らせるために
水や温度や、日照を、メロンに問いながらコントロールしてゆくのです。

それぞれどのようにして調節するのかといいますと
水は農業用水のバルブをあけている時間と、水やりのタイミングで。
温度は、ハウスの開け閉めや、内装ビニールを取り去って行く作業によって。
日照は、ハウスに遮光ネットなどをかけて抑えます。

これらの手法をつかいこなし、見た目がよく出来たメロンは、
中身もまた良いとききます。
確かに、順調に生き生きと伸びたメロンは、美しく、いかにも美味そうにみえます。
駆け出し農家の我が家に、もちろん全てがそう出来るはずはありませんが
日々、そのようなメロンを一つでも多く穫りたいと願い、働いている次第です。

さて、お天道様が強いのはありがたい。出来ることなら、これがしばらく続いて欲しい。
けれども、あまりにも急に気温が上がったせいか、
昨日の夕方、竜巻注意情報なるものが発令されました。
ラジオで初めて聞いたのですが、雷が鳴るとか、あたりが暗くなるなど
積乱雲の下に入ったと感じたら、すぐ頑丈な建物の中に避難するように、とのこと。

頑丈な建物?この村はずれにはありません。そんなものは。
こういうとき、雷が落ちそうな一本立ちの木がない森の中にでも逃げたらよいのでしょうか。
もっとも森があるような山間では竜巻にそれほど心配要らないのかもしれませんが、
もしも平野で雷雲に襲われたら、最寄りの小学校の校舎の軒先でも拝借して雨宿りすべし、と解釈しました。
しかし不審者お断り、といわれたら残念だけれども仕方ありません。

今回は案の定、近い雷が数回鳴っただけで、入道雲は去ってしまいました。
ところが同じ頃、北見では雹が振り、沢山のタマネギがつぶされてしまったとのこと。
数十分のあいだに、ひと夏の稼ぎがつぶされることを思うと、たまりません。

ハウス栽培、すなわち人工砂漠は作物を管理するためにあるものです。
そのおかげで、竜巻の害は防げずとも、少しばかりの荒天を凌ぐことができています。
手間も資材も沢山要りますが、施設栽培の有り難みをかみしめた夕べです。

23:14:34 | momouyda | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

June 21, 2009

お天道様いずこ

じっと我慢の10日間が、過ぎようとしています。
前の記事を書いた12日を最後に、今日までまともな晴れの日ががなく
10日間の日照時間は、たったの12時間です。
まともに晴れていれば、一日で9時間の日照が得られるところ、このていたらく。

もちろん、ハウス内の気温を出来るだけ落とさぬよう
uydaはストーブを2台どころか7台も掻き集めて来て、
花芽が育っているハウスにはすべて、夜な夜な焚いておりました。
毎日、3千円分の灯油が消えてゆき、どうにか被害をちいさく押さえるのが精一杯です。

我が家のメロンのうち、最初のハウスはその影響をまともに受け
ぐれてヤクザ化したものや、小さく固まろうとするものがおります。
のびのびとしていて力強いのが、キングルビーの身上ですから
今後、その名にふさわしくないものは木から取り外して、残った実に養分を譲ることにします。

その他のハウスは、今のところ美味しく膨らんでゆきそうな玉をつけておりますが
全体的に成長が失速した分、収穫も遅れてくるであろう、という見通しとなっております。
おそらくは、お盆休みの後にも若干の出荷が可能になるかもしれません。

さて、こんな我が家のあたふたぶりを左うちわでご覧になっているのは
ハウスの土中に温水管を埋め込み、ボイラーで地温を上げておられる農家さんです。
メロンも人間と同様、床暖房のほうが体によく
こんな日照不足でも、加温メロンはいきいきと成長を続けていました。
光による光合成が盛んでなくとも、地温が高い分、根の働きがよいので
多少の日照不足なぞ何のその。

しかも、今日聞いていたラジオからは
太陽光線の代わりに、植物の成長を促す波長のLEDが開発、商品化されると聞きました。
このタイミングで、しかもラジオ好聴層である農家や主婦やリタイア世代に向けて
しかもNHKなのに開発元の社名までニュースで読み上げるとは、なんとあざといことか。
野菜生産工場向けとのことですが、投雪機、ボイラーをはじめ天候不順からの解放は、
古くから苦労されて来た農家さんの夢でもあるのです。

しかし、それにはそれなりの投資が必要であって
安心安全にに代わる金額には、つくづく感心させられます。
その一方で、加温していない農家さんの間では、「メロン割れてないか?」が
昨今の挨拶となってしまいました。

村はずれの我が家は、この悲壮な挨拶をかわす機会そのものがありません。
それがかえって有り難く思えるのは
前向きに、これからのメロンを手厚く育ててゆきたい今
その気持ちに、悲壮感は無用だと思うからです。

さて、独りよがりはこの辺にして、
我が家のシータは、すっかり毛変わりが進み、白っぽく衣替えしました。
ブラシをかけ終わると、毎晩きまってげんこつ大の灰色の毛玉が出来ます。
今宵も毛繕いが終わると、夜のスイカ畑に闖入者がいないか、
パトロールをすると言ってさっそく飛び出して行きました。
無邪気ゆえの強さ。お陽様がどうの、と嘆く人間をよそに平静を保ち続けています。

23:47:09 | momouyda | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

June 12, 2009

梅雨前線とメロン

気がつけば6月も半ば。

メロンの親方のところでも、我が家でも
毎日まいにちただ無心にメロンの蔓をちぎっているので
時間の感覚がまるでありません。

メロン栽培に携わって4年目になったからか、
最近は意識とは別のところで手が動いている事も多く
とりとめもない事をつぎつぎと頭に浮かべては見送り、
つい口に出た独り言に、はっとすることもしばしばです。
無心になりすぎて、気分にあった鼻歌さえ、探そうにもてんで思いつかない有様。
これぞメロン三昧というのかもしれません。

おかげさまで、我が家のメロンはほどよく仕事が詰まっており
やや遅れ気味ながらも、しっかりとした手順を踏む事ができています。
全国的には雨不足のもようですが、山部地区はなぜか雨が多く
つかの間の日差しがありがたいこのごろです。
しかし、梅雨前線の微妙な加減で、日によって寒暖の差が激しいこと。
これが目下の課題です。

ちょうど我が家のメロンは、実が膨らみ始めて約10日経ち
花芽から果実に移るドラマチックなお年頃です。
青いキウィフルーツみたいだった花芽が大人の握りこぶしくらいになり、
表面が硬くなって来て、冷たいかんじの白い実となります。
このわずかな時期に低温にあたると、いきなりひどい割れ目が入ってしまいます。
白い実に、赤い血糊のような汁をたたえて、
縦に横にとびりびり割れる姿の痛々しいこと。
その様子は、きっと作り手でなくとも誰でもぎょっとすることでしょう。
そのひび割れは、治る事なく最後まで残るといいますか
その傷跡がが太くて気味の悪いネットとなり、がっかりするほど品がなくなります。
中身がいくら同じとはいえ、お値段もまたしかり。

加温設備のない我が家でこれを防ぐには、気温の下がる前からストーブを炊き
表面の皮を縮ませないようにします。

幸い、日中の日差しで暖められた温度がハウスに残っているので
今晩はそれほど冷えないのですが
梅雨前線が活発になる今週末は、外気温がとても低くなると思われます。
WEB上の天気予報をいくつも見て、uydaはこの夏のさなかだというのに
あすストーブ2台を追加購入する!と宣言し、
あとは黙って背中を向け、布団に入って行きました。

同じ事を考えているメロン屋さんは、他にもきっとおられるので
モノが少ない富良野では、ストーブの在庫が心もとないですが
いくつものメロンを割ることを思えば、無理して手に入れたとしても安い投資にちがいありません。

すでに、最近の雨続きでいくつかひびの入ってしまったメロンがあり、
これ以上メロンに痛い思いをさせたくない気持ちは、二人とも変わりません。

残った順調な玉、これから成長する玉、超零細農家にとっては、
どれもこれもかけがえのない、多感な我がメロン達です。

22:23:10 | momouyda | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

May 29, 2009

スイカ定植とブヨ

カエルの合唱が、ずっと続く季節になりました。
家の前の田んぼに水が張られたとたんに、夏らしくなります。
ため池の周りの木立からは、ハルゼミの声がわんわんとさらに甲高く鳴いています。

足元に目を移せば、わんわん鳴いていいはずのうちの犬が、
相変わらずちっとも吠えずに、声も出さずに口をパクパクさせています。
そう、顔の周りをしつこく飛んでいる、ブヨをつかまえようとしているのです。
その数15匹にものぼろうか、という勢い。
一体あの濃い体毛のどこから吸い付こうというのか、とにかくしつこい輩です。

刺されたら最後、ハチのような痛みはないけれど、私は1週間近く腫れてしまいます。
しかも、いつもやられるのはおでこの周辺部と髪の生え際で、
腫れが日に日に下がって来て、ついに瞼まで来ておしまい、というのが例年のパターンです。
刺されて3日〜4日あたりの開かない瞼の重み、かゆみといったらありません。
出面のおばちゃん達に「おいわさんだ!」と騒がれて余計に腹立たしくなったりもします。

私達も、毎年この時期のブヨにやられっぱなしなので
ハウス外での作業は、帽子の上から蜂よけの黒い網をすっぽりかぶったままです。

先日、2日にわたってスイカを植え付けましたが、
ビニルトンネルを作りながらも二人してずっと網を冠っていました。
この網、外見はともかく慣れてしまえば、まずまず快適です。

しかしこの網、ブヨがさらに寄ってくる曇天になると、
外界よりも黒い網に目の焦点がいきがちになるのか、ときどきめまいがするのが難です。
乗り物酔いが得意な私だけかのことかと思っていたら、uydaも同じ感じがすると言いました。

この時期の富良野は、芽吹きのすすんだ木々や、草の勢いが良くて美しいけれど
ダイナミックなのは景色にとどまらず、虫たちも同じです。
そこが自然の厳しさであり、甘くはない現実をよく物語っています。

メロンはともかくスイカも、こうした自然環境そのままの状態で栽培することはならず
地面に張ったマルチ2種と、トンネル被覆というビニールシートで
ごく簡単な温室環境を作り上げて、栽培しています。
防水や保温の効果で、雑草やカビなどの微生物を避けることが出来るからです。

先輩、あるいは農業を志す仲間うちでも、食料栽培にこうした資材を大量に使う事に疑問をもち
実際に、いずれ土に返る紙を使ってマルチをしている方もおられます。

我が家では、メロンというこれまたエゴの結晶みたいな作物とご縁があり
こうした農業資材という文明の恩恵無しには稼業が成り立たず
このプラスチック社会の有り難みを、しみじみと感じずにはおれません。

この、山際の自然の強さと、美しく美味しい作物を穫ることとの間に調和を見いだすこと。
無理は承知でも、つねに問題意識は忘れずにいようと思います。

ブヨの猛攻のまえに、人間なぞほんとうに無力なものです。
しかし、作物たちはいまのところ元気に育っております。


23:14:30 | momouyda | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

May 24, 2009

みつばち耐久レース

初夏の山部地区では、メロンの花が次々と咲いてきています。
花が無事に咲き、みつばちの力を借りて受粉したら
いよいよメロンの玉が膨らみ始めます。

この頃、メロンのヘタの部分のつるがすごい勢いで伸びるので
芽摘みの作業は、クライマックスにさしかかります。
伸びすぎてしまったら、絡み付きがひどくて作業がしにくいばかりか
木にとっても摘み取ったダメージが、より多くかかることになります。
そんなこんなで、おばさん同士、あまたあるメロンの伸びと争うようにして芽摘みをしています。

BGMは、カサコソと擦れ合う葉っぱの音と、
ハウスに閉じ込められ、暑さのあまりアドレナリンが上がりっ放しになったみつばちの羽音。
F1サーキットのようなその飛びっぷりにも、いいかげん驚かなくなりましたが、
あの、エクゾーストがヒューン!ブーン!と耳元をかすめて行くこともあります。
かすめていくのは、まあ構わないのですが、
それが近くで「ふっ」と止まったら、これがたまりません。

昨日はとりわけひどくて、真正面から眉毛目指して飛んで来て
止まられること2回。耳たぶにも1回。
そうなったら、ひたすらご辞去を願ってじっと祈るばかりです。

目を閉じて祈りながら、ちょうどおでこにみつばちを載せているときに、
メロンの親方が通りがかったので、必殺デコピンで追い払ってもらうものの、
こともあろうに勢い良く放たれた人差し指が命中せず。
もう、この先1週間を棒に振ったかと思いました。
運良く何事も起こらずに2回目には弾かれたみつばちでしたが
前の日に炭坑町のおばさまが、服の上から二の腕の裏側を刺されて大変な目に遭ったあとだけに、
恐ろしさもひとしおです。

考えてみれば、前の晩、いつもの日帰り温泉に行ったので
いつもとは違う石けんで体を洗っていたことを、後で思い出しました。
蜂に襲われたくなければ柑橘系の香りを身につけて、山に入ってはいけないというのに
私の温泉道具に入っていたのは、グレープフルーツ果汁たっぷりのボディーソープでした。
昨年、愚弟が送ってくれたLUSHです。
とてもフレッシュな香りが使い手には心地いいけれども、
夏の山地帯では危険なアイテムなのだということ、すっかり忘れておりました。

加えて、たまたま冠っていたガーゼの手ぬぐいが、芥子色の桜もよう。
蜂が去った後、慌てて裏返して頭に巻き直し、白い面にしたら、あまり来なくなりました。
そして着ていたのが、黒いTシャツ。
無敵の天敵である、熊のイメージか、みつばちは黒い色を見ると攻撃的になるとも聞きます。
背中の日焼けを意識して、私はだいたい紺や黒を着ているのです。
つまりは私、みつばちに刺されたい人、の格好で作業をしていたことになります。

いやはや、やがて昼近くにはハウスが開けられ、
外へ花粉を集めに出たみつばち達は、もう寄っては来ませんでしたが
いささか、その日の不注意が心にしみました。

いま世界的に、みつばち不足が叫ばれています。
そのあおりを受けて、メロンの親方のところでは、いつもの蜂ではスタミナが落ちていたので心もとなく
借入先の違う、元気な蜂を連れて来ている状況です。

我が家の蜂は、運良く例年のものでもうまく働いてくれています。
みつばちを巡る環境にも、暗い影がさしているようで
これからのメロン作りにあたって、私達はどうするべきなのか
この冬、よく調べてみたいことのひとつとなりました。



22:52:16 | momouyda | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks